In Commemoration of Retirement
櫃田さんは不思議な先生であった。年に2回ぐらいの講評会でしか話をした事はないが、20歳そこそこの私の、まだ作品にもなっていない”未熟な発想の切れ端”にもとても丁寧な反応をしてくれ、穏やかな表情で私のやりたい事を理解してくれていた。様な気がする。
大学院に進むにあたり、彼に師事しようかとも考えたが、自分は木版画の技術をもう少し伸ばしたいし、野田先生も非常に気になるという理由などから、櫃田さんの研究室に入るのは断念。人気の研究室でもあったし、素直に身を引いた。ちょっと惜しかったが仕方が無い。
しかし今回の展覧会を観て、ちょっぴり後悔した。それは展示の一角に陳列された彼の画集や絵本等のコレクションの数々を見て。今は絶版となっている猪熊弦一郎の「画家のおもちゃ箱」や「もじゃもじゃペーター」(かなり古いもの)が沢山並んでいたのだ。
そういえば先生の教官室を訪ねた時(なんでだだっか忘れた!)、KIKI SMITH のこれまた絶版の写真集を見せてもらったなぁ。もっと仲良くすれば良かった。後悔先に立たず。
櫃田先生はキム・ゴードンやガールズパワーら辺のにも敏感で、花椿のエディターだった林央子さんの講義をしたり、オシャレな軽やかなアートワークスが好きだった気がする。私はあまりにも自分の感覚にドンピシャ&何故この様なおじさまが?と混乱し、警戒してしまったのかもしれない。素直になびいていれば良かった..か?
考えてみれば、奈良美智さんも杉戸洋さんなんかも教え子の様なので、この感覚は一部の男性にも共通してある様です。伊藤存さんとか。
まぁ素敵な人だったという事です。最後にインタビューできて良かった。